干場義雅が選ぶ旅の必需品 Travel Story Volume.3 『FORZA STYLE』編集長として、またファッションディレクターとして活躍する干場義雅が、旅のストーリーとともに旅の必需品を語ります。

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干場 義雅

干場 義雅監修
『FORZA STYLE』編集長/ファッションディレクター

プロフィール

数々の雑誌の編集者を経て、『LEON』の創刊に参画。「モテるオヤジ」「ちょい不良(ワル)」など一大ブームを作る。その後『OCEANS』を創刊し、副編集長兼クリエイティブディレクターに。フジテレビ『にじいろジーン』、テレビ朝日『グッド!モーニング』、日本テレビ『ヒルナンデス』など、テレビ番組でもおなじみ。船旅を愛する男女誌『Sette Mari(セッテ・マーリ)』の編集長として、また現在は、講談社のウェブマガジン『FORZA STYLE』(http://forzastyle.com)の編集長として活躍。著書に『世界のエリートなら誰でも知っているお洒落の本質』(PHP)、『一流に学ぶ色気と着こなし』(宝島社)、『干場義雅が教える大人カジュアル 究極の私服』(日本文芸社)がある。新聞、テレビ、雑誌、ラジオ、トークショー、イベントなど、その活動はメディアの枠を越えて多岐に及ぶ。

旅に持っていくシャツは
白とブルーの無地があればいい

シャツは、自分のスタイルを形成する上で欠かすことの出来ないアイテムです。言ってみれば必ず持っていなければいけない基本のアイテム。とはいえ、世の中には様々な素材やデザインのシャツが溢れています。何を選べば良いのか?どうやって着こなせば良いのか?わからない方もいらっしゃることでしょう。そこで今回は、基本的なシャツの選び方を、順序立ててレクチャーしていきます。

まずシャツの意味と出自を知ることが大切

まず、自分に似合うシャツを探す前に、知っておくべき大切なことがあります。それはシャツの出自です。シャツの意味をご存知でしょうか?そもそもシャツは下着だったのです。シャツは下着だから、淑女の前で上着を脱ぐことは許されていませんでした。品性を疑われるため、紳士がやってはいけない行為のひとつだったのです。今でも下着一枚で公道を歩いていれば、公然猥褻罪で捕まるのですから、当然のこと。今の時代より、はるかに規律が厳しかった古い時代のことを考えれば、紳士たちが上着を脱ぐことに抵抗があったのも頷けるはずです。

もともとメンズファッションの紀元は、イギリスが発祥と言われています。英国人たちが伝統やルールを作り、それが世界各国に伝わっていきました。シャツも同様で、まずは英国紳士たちが着用し、世界各国に移動していくことで、その国の文化と相まって形態が変化していきました。

シャツにポケットが着くようになったのは、イギリス人たちがアメリカに渡った時のこと。先ほども触れましたが、シャツは下着という認識でした。下着というからには上着が存在し、上着はシャツの上に着るジャケットのことを指していました。だから、上着には、いろいろなモノを入れるためのポケットが付いていたのです。もっと言うなら、上着にポケットがあるので、シャツにはポケットがついているものが存在しなかったのです。それが、利便性や合理性、実用性を求めるアメリカ人がシャツ一枚で過ごすようになったときに、シャツにポケットが無いことを不便に感じ、ポケットを縫い付けて着るようになったのです。実用性からのデザインなので悪くはありませんが、本来ポケットはないものだったということを知っておくと、今の時代におけるシャツの着こなし方も変わるのです。

シャツはシャツなんだから、ポケットが胸に付いていようが、いまいがどっちだっていい!ということを言う方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり大人としてはモノの出自を知っていることは大切。シャツがそもそも下着だったということを知っていると、例え上着が必要のない場面でも、ジャケットを必ず持って行動するという自分のスタイル形成にも繋がっていくと思うのです。

次に自分にピッタリの基本の一枚を手に入れる

さて、シャツの出自を知ったところで、次に大事になるのが、いかにして自分に似合うシャツを見つけることが出来るかということ。自分に似合うシャツを探すことは、実はとても大変な作業です。僕も、自分に似合うシャツに辿り着くまでに、沢山のお金を使い苦労してきました(笑)

シャツは、世の中にあるほとんどのブランドから出ているといっても過言ではありません。その中には、襟が大きかったり、襟が無かったり、裾が長かったり、極端に短かったり、半袖があったり、ボタンがたくさんついていたり……。シャツといっても、本当にいろいろなものがあります。

そこで僕としては、まず自分の似合う基本の一枚のシャツを買ってみることをおすすめしたいのです。自分の型、つまり自分に似合う一番の基本スタイル、ベース(基準)を見つければ、回り道をして余計なお金を使わないで済む分、結果、経済的になります。基本となるシャツを一枚持っていれば、それを今後の基準値にすることが出来るので、実はとても便利です。あれこれと流行に流されることも少なくなるので、まずは基本の一枚を買うことをおすすめする次第。あとは、そのシャツを基本にして、お直し屋さんに行って体型補正してもらえばいいのです。信用の出来るお直し屋さんに持って行けば、お直し価格だけで自分の体型に合わせることが出来ます。

素材も大切

素材は、いろいろな種類がありますが、ビジネススタイルで使えるとなると、コットンが便利です。どんな服にも合わせやすいので最強と言っていいかもしれません。あとは、ストレッチ性が高い素材も使い勝手が良いのでおすすめです。シャツ一枚とっても、選ぶ素材によって着た時の印象は変わるし、着るべく季節も変わるし、当然コーディネートも変わるのです。だからこそ、その素材にどういう特性があって、どんなTPPOに合うか?つまり、Time(いつ)、Place(どんな場所で)、Person(誰と)、Occasion(どんな目的で)に合うかを考えることが大人にとっては重要です。シャツは、デザインや色や柄ではなく、素材で勝負。例えるなら、本当に美味しいおにぎりと同じということ。お米の素材自体が美味しければ、中身の具材や海苔なんかに頼らなくたって、極めてシンプルな塩むすびで、十分に美味しいものが出来るのです。僕は、ファッションに迷ったりすると、頭の中を整理する上で、食に例えて考えるようにしています。シンプル・イズ・ベスト。これは、すべての僕の洋服の選び方に共通しているテーマであり、根幹の考え方なのです。

デザインは、クラシックが根底に流れるものでベーシックなものを!

形は、デザインされ過ぎていない基本的なもの、ベーシックなものが良いでしょう。裾が凄く長いとか、襟が極端に大きいとか、ボタンが無いとか……、突飛なデザインのものは選ばないようにしましょう。なぜなら、突飛なデザインのシャツは、自分の体型やパーソナリティに似合うように作られたものではなく、あくまで他人がデザインしたものだからです。デザイン性が高く突飛だから、他に合わせるアイテムとバランスを取るのが難しくなってしまいます。さらに言うなら、突飛なデザインに引っ張られて、一番見せるべき大切な中身を見えにくくします。いつも、僕の中での答えは決まっています。「普通でいいんです、普通で」。変わったデザインは好きではありません。着回すことを考えるとベーシックなデザインに勝るものはないのです。ベーシックなデザインといってもいろいろありますが……、出来れば、僕の場合はクラシックスタイルをベースにしたものが理想。なぜなら、自分が好きなスーツやジャケットに似合うし、汎用性が高いからです。

襟型の基本は自分の顔の大きさや顔の形状に似合うレギュラーカラーやセミワイドスプレッドを。前立ては、あっても無くてもどちらでもいいでしょう。スーツやジャケット、グレーパンツにも似合うし、デニムやショートパンツなんかにも着られる万能アイテムです。だからこそ、シャツはなるべく同じデザインで、素材によって着分けるというのが、僕が一番大事にしている部分です。シャツだけで30枚以上持っていますが、ブランドは複数あれど、いずれもほとんど同じ形(デザイン)です。なぜなら、デザインが違うものを選ぶと、必然とジャケットもそのシャツに合ったものが必要になり、シャツだけでなくジャケットの数も増えてしまうからです。シャツも、ジャケットも、その他のアイテムもそうですが……、まずは自分の体型に似合う一枚を見つけ、そこから素材を変えて揃えて行くことが、自分を素敵に見せる近道なのかもしれません。

サイズは、自分の体型を美しく見せてくれる大きさで!

素材、デザインが決まったら、次はサイズについてです。痩せている人なら、あまりにもタイトなサイズにすると華奢に見えてしまいます。今度は、太っている方がかなりサイズ感に余裕を持ってオーダーすると、余計に太って見えてしまう可能性があります。自分の体型を美しく見せるサイジングなんて、プロじゃなきゃわからない!と思う方もいらっしゃると思いますので、そういう方は、必ず信頼できるお店に行ってみることです。それ以外でお話をすると、僕の場合は、一年に一回自分のヌード寸を計測するようにしています。ヌード寸は、メジャーを持っていれば、バスト、ウエスト、ヒップぐらいなら自分でも計測できます。バスト96cm、ウエスト74cm、ヒップ84cm。これは僕のヌード寸ですが……。自分の体型を知っていると、自分に似合うシャツを作るときにとても役に立ちます。さらに言ってしまえば、自分の体型管理、健康管理にも繋がっていくのです。あとは、イタリアンサイズなら39。SML表示ならMなど、自分の体型の、各国のサイズ表記を知っておくのも便利です。イタリアンサイズの39をベースにして、そこから補正していき、右と左の袖の長さも1cm違うので、必ずその部分は、職人の方やショップスタッフに伝えるようにしています。いずれにしても、サイズで大切なことは自分のサイズを知っておくことなのです。

素材でサイズを変えることもあります。コットンなど、ジャストフィットで着たい素材のシャツに関しては、上記のような自分の体型にフィットするものを選びますが、リゾート地で着るようなシャツに関しては、リラックスした雰囲気を出すために、やや大きめのサイズをオーダーしてお願いするようにしています。麻のシャツは、どうしても素材の特性上、伸びにくいのが特徴です。麻シャツをピチピチで着ると、すごいシワの入り方になってしまうんですね。シワが入ると袖や着丈が上がってきてしまい短くなってしまいます。コットンより麻の方が素材の表情がありますが、シワが入りやすいので、選ぶ際に注意が必要なのです。

  • Brooks Brothers

ディテールは、凝り過ぎずノーマルで

ディテールは、日本語では細部ということなんですが……、これもやり過ぎは個人的に好きではありません。ボタンが厚すぎるとかけにくかったり、割れやすかったりします。だから、ボタンひとつとっても、なるべくかけやすく、割れにくい素材や大きさを選ぶようにしています。ステッチの色も同じです。よく白シャツのすべてのボタンホールが、白ではなく違う色を使ったものがありますが、ビジネスシーンではあまりおすすめしません。白に他の色、例えば黒が使われることで、2色になってしまって、コーディネートが制御されてしまうのです。コーディネートは、なるべくシンプルに完結した色使いの方が、中身が際立ちます。ですので、僕は、白シャツに他の色のステッチが施されたものはなるべく着ないようにしているのです。

ステッチやボタン、イニシャルの入れ方など、ディテールをこだわって個性を主張することもできますが……、僕はなるべくなら主張を少なくするようにしています。なぜなら、見て欲しい部分はシャツのディテールではなく、自分自身の中身だからです。

今回は、僕が考えるシャツについての基本的な選び方についてお話してきましたが、要するに、基本的なシャツこそ、大人の男性のスタイルには必要不可欠であるということ。シャツは、白い器やお皿みたいなものなのかもしれません。上に盛りつけられる料理がどう変化しようが、何年も変わらないベーシックでオーソドックスなお皿であれば、美味しく見えるということ。ブルックス ブラザーズのように、時代を越えて紳士たちに長年愛され続けてきた歴史あるブランドの白いシャツや淡いブルーのシャツであれば、ずっと長く愛用出来るのです。ちなみに、僕は、こういった自分に似合う基本のシャツを見つけたら、白を30枚、淡いブルーを30枚持って、常に10枚ずつぐらいクリーニングに出して、常にクリーンな状態をキープして着ています。

ブルックス ブラザーズのシャツ
干場おすすめポイント!

  • @時代の流行で左右されない普遍的なベーシックなデザインであること。
  • A素材も良質なコットンで着心地が良く、丈夫であること。
  • B男性のシャツにおいて、白と淡いブルーは、必ず持っていなければいけない色で、中でもブルックス ブラザーズのシャツの色出しは王道だからいい。
  • Cネイビー、グレーといった基本のスーツやジャケットに似合う汎用性の高さがあること。
  • Dやや小さめのレギュラーカラーが、現代的な細身のネクタイに似合うこと。

Volume.3

Brooks Brothers

1818年ニューヨークで創業以来、ブルックス ブラザーズはアメリカで初めて既製服を売り出し、その歴史を通してシアサッカー、マドラス、ノンアイロンシャツ、そしてオリジナルポロカラーシャツといった象徴的な商品を発表。2世紀近くにわたり、変わらぬ伝統と価値を守り続け、世代を超えて紳士淑女の目標となっているブランド。

¥17,600(税込)

販売終了いたしました

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