干場義雅が選ぶ旅の必需品 Travel Story Volume.1 『FORZA STYLE』編集長として、またファッションディレクターとして活躍する干場義雅が、旅のストーリーとともに旅の必需品を語ります。

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干場 義雅

干場 義雅監修
『FORZA STYLE』編集長/ファッションディレクター

プロフィール

数々の雑誌の編集者を経て、『LEON』の創刊に参画。「モテるオヤジ」「ちょい不良(ワル)」など一大ブームを作る。その後『OCEANS』を創刊し、副編集長兼クリエイティブディレクターに。フジテレビ『にじいろジーン』、テレビ朝日『グッド!モーニング』、日本テレビ『ヒルナンデス』など、テレビ番組でもおなじみ。船旅を愛する男女誌『Sette Mari(セッテ・マーリ)』の編集長として、また現在は、講談社のウェブマガジン『FORZA STYLE』(http://forzastyle.com)の編集長として活躍。著書に『世界のエリートなら誰でも知っているお洒落の本質』(PHP)、『一流に学ぶ色気と着こなし』(宝島社)、『干場義雅が教える大人カジュアル 究極の私服』(日本文芸社)がある。新聞、テレビ、雑誌、ラジオ、トークショー、イベントなど、その活動はメディアの枠を越えて多岐に及ぶ。

いつも同じスーツを着ていた父から学んだこと

テーラーだった父は、いつも同じ恰好をしていました。仕事に行くのも、旅に行くのも、美術館に行くのも、ご飯を食べに行くのも、どこに行くのもいつも同じ恰好。いつしか不思議に思って、「なんで他の恰好をしないの?」と聞いてみたことがあったんです。そうしたら父はこんなことを言ったのです。「いいんだよ、私はいつも同じ恰好で。これが好きなのさ。落ち着くんだよ……」と。

父が亡くなった後、箪笥の中のワードローブを母に見せてもらう機会がありました。そこにはグレーのスーツが10着ほどかかっていました。同じ色の同じカタチのグレーのスーツ。よく見たら、そのうちの5着は春夏用のサマーウール素材で、残りの5着は秋冬用のフランネル素材。揃いも揃って、10着とも同じミディアムグレーの色のスーツだったのです。普段は白いシャツに黒のネクタイ。上着の胸ポケットにはシルクのポケットチーフ。そして頭には黒のボルサリーノ。寒い冬だけは、白いシャツの代わりに僕が誕生日にあげたカシミヤ素材の黒のタートルネックを着る。これが父のスタイルでした。いつしか父と同じような年齢になり、気づけば自分も父と同じスタイルを自然とするようになっていました。このスタイルをしていると、自分らしくいられて心が落ち着くことがわかったのです。そして、親子はだんだんと似ていくことも……。

僕がミディアムグレーのスーツにたどり着いた理由

今、僕が毎日のように着ているのも仕立てたミディアムグレーのスーツです。素材は、シワになり難く、アイロンをかけるとクリースがビシッと決まる目が詰まった上質なウール。デザインは、世界のどこへ行っても通用する3ボタン段返り。いわばグローバルスタンダードなものです。サイジングは、何度も仕立てたことによって辿り着いた自分を一番良く見せてくれるバランス。スーツ以外のアイテムは、セミワイドスプレッドカラーのシャツに、黒の7cm幅のウールのネクタイ。胸ポケットには白麻のポケットチーフ。腕には愛用している機械式の腕時計。イギリス、イタリア、スイス、フランス、アメリカ、日本……。着ている国もブランドも、全部バラバラですが、それらはすべて僕が長年かけて吟味して集め、愛用しているものばかり。言わば、「干場の基本スタイル」です。そしてそのスタイルは、年齢を経るごとに磨きをかけ、自分の内なる声に耳を傾け、刃物のように鋭敏に研ぎ澄まし、「干場の究極スタイル」を作りたいと思っています。

生地や色、カタチを選び、採寸、試着、バランスやディテールなど……、知識や経験が無ければ美しく完成されたスーツにはなかなか到達出来ないのがオーダーの難しさです。さらに、そこに似合うシャツやネクタイ、靴を選び、スタイル全体に統一感やハーモニーを持たせなければいけないとなると、本当に美しい究極のスタイルを作り上げるには経験と知識が必要になります。父譲りで築き上げた「干場の基本スタイル」は、言って見ればベースであり、家みたいなもの。それがあるからこそ、旅や出張に行き、いろいろな経験をして、また家に戻り、さらなる自分を作り上げることができるのです。ベースである、自分のスタイル(型)がしっかりしていれば、よっぽどのことがない限り、スタイルはブレなくなります。

ファッション(流行)よりも、スタイル(型)を

今回、紹介しているMACKINTOSH LONDONのコートは、自分のスタイルに合うと思って購入したものです。流行に関係なく、何年も着られるベーシックなデザイン。裏地が付いていたり、脇の下にはベンチレーションが付いていたりと、機能性にも優れています。いつも着ているスーツに似合うのはもちろん、旅先のふと空いた時間に美術館を巡るなんていうときのオフタイムのスタイルにも、サラッと羽織ることが出来る優れものです。さらに、クルッと畳んでスーツケースにしまっておいても、復元力が高い高密度なコットンを使用しているので、シワになりにくいのも僕が気に入っている点。言ってみれば、旅の必需品なのです。

MACKINTOSH LONDON

先日、ロンドンに取材で訪れた際にも持って行きました。ロンドン市内でのプレゼンテーションがすべて終わり、タキシードに着替え、ホテルを出た時でした。突然、雨が降ってきたのです。ディナー会場がある、ビートルズのアルバム「アビーロード」の通りまでは少し距離もある。とはいえ、今回の出張に傘は持ってきていない。しかも、フォーマルなタキシードスタイル……。その時、スーツケースの中に忍ばせておいたベージュのステンカラーコートを思い出したのです。部屋に戻り、タキシードの上にそのステンカラーコートを羽織り、ことなきを得たのです。

スタイルとは、型であり、生活様式のこと。ファッション=流行。スタイル=型。という意味を知る前は、毎日あれこれと変えるのがお洒落だと勘違いしていた時期もありましたが、自分らしくいられるスタイル(型)を持つようになったら、今は変えることより、ブレずに変えないことの方が素敵なことだと思うようになりました。それは、何より父から教えてもらった美学なのかもしれません。スタイル(型)を作り、少しづつ自分に似合うものを見つけていく。それは旅のようでもあり、それこそが人生なのかもしれません。

Volume.1

MACKINTOSH LONDON

ナチュラルな光沢を持ち、通常のコート用ギャバジン素材の2倍以上の耐水度を誇るオリジナル素材『ギャバジン330』を用いたステンカラーコート。ハウスチェック柄の袖なしのライナー付きで気候に合わせて長い間着用できます。

¥132,000(税込)

販売終了いたしました

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